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「覚悟と誠意。何かをやり遂げるために必要なものがあなたには、ちゃんと備わっているようね」

次元の魔女の手の平に乗せられた、異次元への案内役である白いモコナ。眠って閉じていた瞳がすうっと開かれる。

「・・・それと、気を付けて」

次元の魔女は三人を順番に見据えた。

「彼女はあの子の記憶の羽根に宿る“チカラ”に引きつけられる」
「さくらの記憶の羽根に、彼女の、チカラが?」

少年は眉を寄せ、少し後ろで抱えられている彼女を一瞥した。

「その“チカラ”は元来彼女のもの。だから彼女と呼応する。記憶の羽根がその子に戻った時、同時に彼女へ“チカラ”も戻るわ。でも、まだ上手く制御できない彼女が暴走しないように気を付けて」

何か口を開こうとした魔術師から次元の魔女を遮断するかのようにモコナが浮かぶ。

「・・・では、行きなさい」

モコナの背から大きな白い翼が広がり、彼らの足元に広がった魔法陣が異次元へと誘うように飲み込んだ。

まるで彼らの門出でも祝うかのように、さっきまで止む気配すら見せなかった雨は突如止めば、雲の間から差し込む暖かい日の光は草木に残った雨の滴に反射しキラキラ光る。
そんな晴れきった清々しい空を次元の魔女は仰ぐ。

「彼らの旅路に幸多からんことを」

そう切実に心から願う。







幼き頃の『彼女』が願ったように・・・ ―――――――


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