地響きと共に数々の悲鳴と断末魔が鳴りやまずに響き渡る。酷く濃い血の匂いが辺りに充満して、肺の中へと入りこんでくる。
逃げ惑う人々の中を掻き分けるようにして、小さい幼子の手を離さぬように懸命に進む。荒くなる息、朦朧とする意識を気に留めることなく、目的地へと向かう。
目的地へたどり着いた、と認識した瞬間、息は絶え絶えになり、意識をつなぎとめることが出来なくなった。
幼子の手を離し、わずかに残った最後の力を振り絞ってその小さな体を押せばそれは重力に任せて落ちていった。
そして、最期に小さく呟いた。
『------------』
瞳を閉じ、闇の中で意識を手放すと見えるこれは夢でなく、“記憶”だった。それは実に鮮明で、匂いも、温度も、全てがありのままの“記憶”。
贖えない睡魔が襲い掛かり、幼い頃から何度も何度も、繰り返し私を捕らえて離さなかった。
けれどそれは決して私の記憶ではなかった。
それは、姉の“記憶”だった。
自らの命をかけてまで私を守った姉の“記憶”。