06

「ここだ」


建物の上を飛び渡っていると、下から神田の声が聞こえた。そこには路地に立つ神田と人情とそれに付き添う人間がいた。
神田の隣へ飛び降りると、神田はじろりと私を見た。


「化物みたいな反射神経してんだな」
「?」


これは嫌味なのだろうか判別の付かない神田の言葉に私は首を傾げた。


「最初の一撃の時、完全によけきれないと思ったお前はアクマの攻撃より先に刃が届くようにアクマが振り向く同じ方向に体を倒してただろ」
「でも結局、私はアクマに何の傷跡を残すこともできず、そのまま攻撃されたし・・・」
「お前はどっちの攻撃を受けたときでも瞬時に受け身を取ってた。あんな所業、普通は無理だ」


俯かせていた顔を上げ、神田を見やった。けれど神田はこちらを向かなかった。


「で、お前が抱えてんのは何だ」
「あぁ、この人はファインダーさん」


ファインダーとはいってもトマさんではない。名前も知らない、イノセンスを守るために命を懸けた人。


「んなこた分かってんだよ。なんでそんな死体持ってんだって聞いてんだよ!」
「あのままあそこに置いてたらアレンとアクマが戦って傷つけられるかもしれないし」
「置いてけ。荷物になるだけだ」
「嫌だ。置いてかない」
「邪魔だ」
「仮にそうなったとしても、とりあえずはもっと安全な場所に移動させる」
「お前ら、2人そろって甘ったれた奴だな」
「やめて」
「・・・・」
「私はそうだけど、アレンは違う」


ファインダーの人をこうやって連れてきたのは別に死者を弔う気持ちからじゃない。優しさじゃない、正義感じゃない、仲間意識じゃない。ただ、私は教団の人とは同じことをしたくないという単純で滑稽な意地。私は決して人の命を駒のように使う人間ではないのだと、そうしなくても勝つことが出来るのだと。教団に対してそれを証明したいがために、そうしているに過ぎない。自己満足だと言われても、たとえそうであっても、それでもそれ以外の方法を思いつけず何もしないよりはましだった。
だってそれこそが、私が嫌悪感を抱いている教団に来た理由なのだから。


もう私の相手をするのが疲れたのか、神田は舌打ちの後、話題を変えた。


「これから地下に入る」