窒息する花


私は一体、いつどこで何を間違えたのだろう。


その答えを探そうと何度あがいても、見つからず、その後に迫りくる虚無感に感情が溺れていく。

そんなことが幾度か繰り返されていくうちにそこから這い上がることをやめた。

そうすることでしか、私は自分の大切な人を傷つけないでいられなかった。その方法しか私には出来なかった。



初めに、私には体しか与えられなかった。心も、名も、親も、故郷も、愛も与えてはもらえなかった。生きる場所も生きる権利も私には許されていなかった。

陽の届かない、人のいない薄暗い闇の中で私の記憶は始まる。

呼吸をしているのにまるで窒息しているようで。
生きているのにまるで死んでいるようで。

自分の存在を認知するすべのなかった私にとって何もかもが空っぽだった。見える世界も自分自身さえも。

ある日突然、私は陽の当たる場所へと連れ出してもらえた。
そこでは心を、名を、親を、家を、愛を与えてもらった。生きる場所も生きる権利も私に許された。
空っぽだった世界が形を持ち、重さを持ち、色を持ち、温度を持った。それと同じように自分自身の存在を認識し、空っぽだった私の体に心が入った。感情が宿った。知識が入った。

今の自分が幸福であり、自分の出自はそうでないと認識できるようになった。

けれどそれはあまり長く続かなった。
私に与えられたもの全てが、私の知らぬ間にゆっくりと確実に奪われていった。それに気付いたころには私には何もなかった。

これが絶望することなのだと確信したころには何もかもが手遅れだった。

涙とともに体から溢れだした絶望感、憎悪は止まらなかった。
とめどなくあふれ出し、どよめきながら、収まり切らない感情は私の全てを食らい、壊していった。


世界が、私の体が再び空っぽに戻っていった。


それは二度繰り返された。終わったころには、私は求めることをやめ、心を閉じて生きることを選んだ。


ただひたすらに、私に命を与えた世界に、命を捧げる。




私の命が、私の胸に咲くその花が、その命を枯らす瞬間まで―――――