窒息する花
この国には面白い昔話がある。
かつてのこの国には五つの山があった。
中央の瀛州。
西の崑崙。
東の蓬莱。
そしてあと二つ。
今はなき岱輿、員喬。
この二つの山は、その山中深くに一匹ずつ封じられていた凶悪かつ強力な悪神、それらが逃げ出す時、大暴れし地を割り、結果、山ごと崩れ落ちたという。
五山は三山だけ残り、今も東西に封じられている二神と逃げ出した二神を合わせて四凶と呼んだ。
北の地で北斗七星によって封じられていた、大きな犬のような獣で盲目聾者の神、渾沌。
南の地で朱雀によって封じられていた、翼を持った虎でひねくれた性格を持つ神、窮奇。
東の地で龍王に封じられている、羊身人面で飢餓猛獣の神、饕餮。
西の地で白虎に封じられている、人面蛇身、朱色の神を持つ水神、共工。
これが“四凶”と呼ばれるもの。
ほとんどの人がこれを昔話どころか、伝説としか思っていない。
まぁ、現実味がないと言われればそうだけど。
けれど―――――――――――――これは紛れもない事実だった。
そして、彼は、一葉は本気で逃げ出した四凶を探している。
彼の親は『天狗』と呼ばれる最高位の神獣。名は白豪。
白豪は逃げ出した四凶の代わりに、藍様によってここに連れてこられ、この国を支える人柱となった。
そんな白豪を人柱という名の奴隷から解放するために、彼は自分の親を奪った人の職、歌士官になった。大切な人を救うためとはいえ、自分の大切な人を奪った者と同じ職に就くのだから、その苦しみや憎しみは生半可なものではなかっただろう。
たとえまだ幼かったとはいえ。
それ以後、幼い子供から大切な親を奪い、白豪に人柱としての未来を与えてしまったことに藍様は心を痛ませた。そしてその責を逃げることなく負った。
伝説の歌士官として敬われていた藍様は、弟子をとらないことで有名だった。けれど、藍様は一葉を唯一の弟子として迎え、彼に歌士官としての道を開いた。
『俺の全てをお前に継ぐから』
それを知った時、幼い私は燃え上がるような嫉妬と憎悪、渇いた虚無感がないまぜになった感情で気が狂いそうになった。
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