なんて素敵な罠
最近のリヴァイさんは、なんだか変だ。用事もないのに電話をしてきたり、仕事が終わればふらりとうちに寄ってみたり。正式にお付き合いをしているわけで、全く問題はないのだが、なかなか馴染めない自分がいる。勿論、とても嬉しいのだけれど。前世の頃はもう少し淡白な人だったと記憶していたが、今はそうでもないようだ。今日だって突然「今から行く」とメールが入った次第だ。仕事帰りにそのまま来た彼は、当たり前だがスーツ姿で、何度見ても見惚れてしまう。
「突然悪かったな。」
「い、いえ!…嬉しいです。今日は、あの…」
明日は土曜日だ。ということは、今日は泊まっていってくれるのだろうか。そう聞きたいのだが、恥ずかしくて尋ねられない。
「風呂、借りていいか?」
「はい!勿論です!」
勢い良く答え、タオルを手渡すと、彼はふっと笑って頭を撫でてくれた。彼の部屋着はうちに置いてある。それを準備するだけで、自然と顔も綻んでしまう私は重症だろうか。彼がお風呂に入っている間は、落ち着かなく、そわそわしてしまう。出てきたら、まず冷えたビールを渡して、なんて考えていると、手元にある携帯が着信を知らせていた。
「エレン?どうしたの?」
『今、大丈夫か?』
なんて良いタイミングだろう。これで私は少し平常心に戻れそうだ。最近は大学内で偶然会わないね、なんて他愛無い話をする。楽しく話していて、リヴァイさんがお風呂から戻ってきたことにも、後ろに立って私の様子を見ていることにも気がつかなかった。
「そういえばエレン、どうして急に電話をかけてきたの?」
『そうだ、電話したのはさ、日曜日の予定を聞こうと思ったんだ。』
「日曜日?」
『ミカサとアルミンとプールにでも行こうかって話してるんだけど、ナマエも行かないか?』
「プール?!いいなぁ!日曜日の予定は…」
ベッドに転がりながら電話をしていた私の足の裏に、突然何かが触れた。
「ひゃっ…!」
驚いて振り向けば、リヴァイさんが私の足の裏に触れていた。足の裏からふくらはぎ、太腿にかけて、わざと擽ってくる。
「やっ…ちょっと、リ、ヴァイさん!やめて…っ、」
擽ったくて、電話どころではない。逃げようとするが、勿論逃げられるはずがない。彼は手を動かしたまま、私に覆いかぶさり、携帯電話を奪った。
『え、おいナマエ?!』
「悪いな、エレン。取り込み中だ。後にしろ。」
彼はそう言って、電話を切った。
「え、え?!リヴァイさん?!」
「…なんだ?」
「今の、絶対にエレンが勘違いするでしょう?!」
「勘違いされたら困るような関係なのか?」
「いや…そういうわけでは。」
「なら、問題ない。」
涼しい顔をして、さらりと言ってのける彼に呆けてしまったが、さすがにこの勘違いのされ方はいただけないだろう。
「問題あります!絶対に変な勘違いされてる…。」
「…どんな勘違いだ?」
ニヤリと笑って問いかけてくるリヴァイさんが憎らしい。そんなこと、口に出せるはずもなく、私は顔に熱が集るのを感じていた。
「ナマエ、日曜は出かけるぞ。」
「え?!は、はい!」
私の意志は関係ないらしい。どこまでも俺様な彼に、呆れて笑ってしまうが、そんなところも含めて、愛しいと思う。言葉にするのは恥ずかしいので、少しでも気持ちが伝わればとギュッと抱き付いた。今頃エレンが携帯電話を見つめて悶々としていることも知らずに。