01
瞬きしたその一瞬後、目の前には森が広がっていました。
「……なんでだ」
さわさわと風にゆれる木の葉と木漏れ日。何だかバカにされてる気がしてならない。
いつも通りの朝を迎え、歯磨きしてあとはソックスを履くだけ、と洗面台の前で鏡を見つめて髪の毛の最終チェックをしたのがついさっき。今足に感じるのはフローリングではなくちょっぴり湿った冷たい土。見ていた鏡は消え失せて、前方に見えるのは延々と広がる木、木、木。あまりの茂りように陽の光がほとんど届いていない。
ここ何処?
ぎゅっと眉間に皺を寄せる。
起きたと思ってたけど実はまだ寝てたのだろうか。夢、にしては感触とかはっきりしていてリアリティーあるけど、夢としか考えられない。そうでなかったら何なんだって話だ。
紺のスカートから覗く素足を一歩踏み出してみる。
冷たい土に足の裏がひんやりとした。そしてもう一歩。
取り敢えずこの辺りを散策しようと、ペタペタと足音をたてながら歩き出した。
ペタペタペタペタ。歩き出して数分後。綺麗に澄んだ湖に到着した。湖の上は木々の枝が届かないので、そこだけ陽の光がサンサンと降り注いでいる。水面がキラキラと光を反射して輝いており、土から草に変わった地面を踏みしめて、その湖を覗き込んだ。
すると、透き通った水面に、鏡を見ていた時と同じように自分の顔がこっちを見返す。
「ん?」
ちら、とその水面下に何かが見えた。気になってじっと見ていればゆっくり浮上してくる赤っぽい何か。鯉かな?
どんどん上がってきてパシャ、と水を跳ねさせ、ちょうど水面の私の顔が映るところに顔を出したそれ。
見つめ合うこと数秒。
「……コイキング」
バシャッ!
そうつぶやいた瞬間身を翻し水中深くに戻っていった魚、コイキング。置き土産に盛大な水しぶきを残して。
「冷たっ」
顔にかかった水滴を手の甲でぐいと吹いた。名前を呼んだら逃げるなんて失礼な。ってか、
「コイキングじゃん、ポケモンじゃん」
わーお、なんて素敵な夢!現実だったらどうしよう嬉しすぎる!脱受験生、そしてニート街道まっしぐら!ポケモンと戯れていれば生きていけるなんてこの上ない幸せだ。
だけど束の間の現実逃避でしかないんだろうな。期待してたらどん底に落とされるのがオチだもの。うん、期待はしない。
一気にそこまで思考を巡らせ、自身を落ち着かせるように、ふいーと気の抜けた息を吐いた。
……さて、これは夢か否か。ぶっちゃけどっちでもいい……というのは嘘だけど、夢じゃなきゃ困るとも現実じゃないと泣くとも思わないのでどちらでもすんなり受け入れられると思う。まあ、現実なら受験の息抜き、プチ旅行だと狂喜乱舞するかもだけど。
近くの木の根元に座り、滑らかな幹に背を預ける。ひんやりした幹を背に感じながら、穴を開けたようにぽっかり覗く青空を見上げた。
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