幻海おばあちゃんがどうして霊波動の使い手として……言うなれば武の道を
歩もうと決めたのかは私だって未だに分からないけれど。
でもきっとあの老婆にも、若い少女時代や蕾みが花開いたような
華々しい女性だった時期もあったはずだ。

それを捨てたとは私は簡単に言う気はない。だって武の道に生きた人生だって
彼女にとっては紛れもない青春だったはずだから。

でも、きっと少なからず後悔ではないけれど
平穏な日常を恋しくなったりしたんじゃないか。

力には責任がともなうことも分かる。そしてそれを後世まで継承し残していく大切さも。
また、この世に妖怪や人ならざる者が跋扈ばっこする限り、幻海のような力をもつ者は必ず必要となる。
でもだからこそ哀れに似たような複雑な気分になるんだ。

普通にしていれば、孫くらいまで居そうなお婆ちゃんなのに。
そんなおばあちゃんに幽助だけじゃなく、また私まで背負い込ませちゃったな。

口酸っぱくして私にここまでにしておけと言っていたのにね。
でも、いつだったか……おばあちゃんが言っていたように
力を持つということは、多くが数奇な運命の星の下に生まれ落ちるという言葉を思い出した。

まだ年端もいかぬ幼くて、妖怪に怯えていた私に哀れむでも、同情するでもない
淡々とアンタも損な人生で生まれてきたねって一言だけこぼしたのが印象に残っている。

私は未だにどこかグダグダと、どうして私がとかもっと普通の人生がよかったと悩むのも
老婆からすれば、しょうがないで片付きそうだから怖いような悲しいような。
そんな感覚にさせたのは誰だろう。元の性格?――彼女からすれば凡人の私には推し量ることもできないわ。

おばあちゃんは私が偶然とは言え、日本に戻ったこのタイミングで
すぐに霊界探偵の補佐になったことについては特に追求しなかった。
こっちだってわざわざ好奇心ですと言ったら殴られそうだから言う気もないけどさ。
ただ、修行しろということから察するにアンタもこれからは覚悟を決めなって意味なのは分かる。

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彷徨いアリス