「なぜ俺にここまでする?」

お前にメリットがないと下から睨み付ける少年に
服をのばして干したまま、呟く。

「人間は……時々ね、メリットやデメリットを考えずに行動しちゃう人がいるんです。
そして私の家の方針で困っている人がいれば自分の出来る範囲で助けろというのがあるので」

パンと再度服をのばし、扇風機を服にあててセットし起動して座る。
彼はずっと分からないといった感じだったので、子供に言い聞かせるように
簡単に言葉にしていく。

「あなたにもきっと、メリットやデメリットとか関係ない
信念や行動することはないですか?――私のは困っている人を助けるのがそれです。
それに……メリットはないと言いますけど、ありますよ?」

「誰か…殺して欲しいやつでもいるのか?」

彼から飛び出した言葉に、面食らい……しかし次の瞬間に悲しくなった。
ああ、彼はそういうものが当たり前の生活だったのかと。
彼からしてみれば真剣だけど、私は小さく首を横にふり困ったように眉を下げる。

「メリットは私のエゴを守ったことです。あなたをもしあそこで放置して
私が何事もなかったように通りすぎていれば、きっと今日は寝れない。
いや、ずっとひどいことをしたんじゃと後悔するかも知れない。
それを回避できただけでも、私からすればメリットです」

彼は黙って何か考えるように、睨むのをやめて聞いていた。
言葉の意味を少しずつかみ砕いているような姿に
少しでも思いが伝わればと願いながら言葉をつむぐ。

「アナタがどういう理由で倒れていたのか、もう聞かないけど
でも……あの…自分の身体を大切にして欲しい。
私のことを憎くて、嫌いでもいいから…とりあえず回復するまで
ここで休んでいってください…お願いします」

小さく頭をさげれば、彼は少し居たたまれなさそうに世話になると呟いた。

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彷徨いアリス