深呼吸して、少しでもこの新鮮でおいしい空気と交わろうと目をとじる。
不意にシャッターをきる音がしたので反射的に音のほうを振り向く。
あ、とスマホをかまえたままでフリーズしている蔵馬。
その意味を理解した時には真っ赤な顔でパクパク口をあけながら
声にならない悲鳴をあげた。
「ごっごめん!!良い風景だなと思ってつい!!」
慌てて弁解する蔵馬に、やっと声と口が追いついて恥ずかしいと叫ぶ。
「いやいや!!こっ…こういうのは美少女だからこそ絵になるというか…。
わっ私の写真なんかアレだよ!?森にかえるクマだからね!!」
「ブフッ…くっ…可愛いよ」
「うわあああ!!けっ消せ!!いや、消させる!!」
慌てて彼からスマホを奪おうとするも、彼の方が背が高いせいで全然届かない。
顔のところにちょうど胸板がくるので、取ろうと手を伸ばした時によろめいて
彼が片手で抱える形で抱き留められた。
胸板が意外と厚い。しかも片手だけで抱き留められたすごい。
……というか、なんだろう。男の汗のにおいがする。
いや、まぁ……そりゃそうだけど……。ハッ、まって……私いま汗臭くない!?
慌てて離れようとしたら、まるで子供を抱き起こすように
ゆっくりと体勢をおこされた。
「転ばなかったお詫びに…消さないから」
小声で爆弾発言をされたが、その時にされたウィンクで
もはやそんなことはどうでもよくなった。
というよりも、思考が……世界がとまったよね。
ザ・ワールドの使い手かなと真っ赤な顔で次のブースに向かう彼についていく。
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彷徨いアリス