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「本日は紅葉さんとの婚約発表にお越しくださり感謝致します」

ほらと、青年に促されるように前に出た少女は失踪で霊界を騒がせていた少女。
青年の言葉に続くように、黙ってゆっくりと報道陣に頭を下げる。

ハエのようにたかるフラッシュ、青年と少女に向けられた銃口のようなマイク。

「なぜ、ロメオ様は普通の人間と婚約を!?」

「いつから恋仲だったのですか!!」

矢継ぎ早に飛んでくる質問に、青年は人のいい笑顔で応対する。
隣の少女はうつむいたまま黙っていた。その姿にも報道陣は違和感を覚えたのか
少女にも質問をしようとすれば、さきほどまでにこやかに対応していた青年が
笑みを崩し、彼女は記憶喪失だと静かに告げた。

突然の告白に、報道陣だけじゃなく……その場で少女を連れ帰ろうと
密かに機会をうかがっていたコエンマとぼたんも唖然とする。

「先日のパーティーで僕は突然何者かに襲われました」

フラッシュが激しき瞬く。少女の肩を抱き寄せ悲しそうに目を伏せる青年。

「それは本当ですか!?――ロメオ様はお怪我はありませんか!?」

静かに、うなづいた青年は抱き寄せた少女を愛おし気に見つめた。

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彷徨いアリス