少女をゆっくりと抱きしめ、耳元で囁(ささや)く。

「コエンマ様、コエンマ様って助けを求めていたね。
でも無理だよ。もうここまで来ればアイツにも止められないさ」

熱い息をはき、頬を染めた青年はニコリと少女に微笑む。

「早く僕の子を産んでくれ。霊界と人間界をつなぐ子を。
僕はそれでようやく人間界への永住権を手に入れられるかも知れない。

――大丈夫。人間界の女とするのは初めてだけど
霊力が高く、霊界とも干渉(かんしょう)の強い君ならきっと
僕の子を孕んでくれるはずさ」

「……やっ…やっ」

「おっと、意識が戻ってきたのかな?
でもまだ混濁(こんだく)してるようだね。
早く薬をうってもらわなきゃ」

少女の表情は変わらなかったが、静かに頬を伝う涙が
青年を拒絶した証だった。

それを見て青年も呆れたようにため息をつくと
諭(さと)すように囁く。

139(189)
→|back
彷徨いアリス