荒い息で汗ばみ、前髪が張り付いた少女のおでこを撫でロメオは呟いた。
「苦しそうな顔をしている。どんな夢を見ていると思うかい?」
「夢……ですかい?」
「ああ、夢さ。僕は今まさにこの瞬間こそが
時々都合のいい夢じゃないかと感じるんだ。
寝ている時に見る夢も含め、すべてが嘘っぽくて
ニセモノのように思えて仕方ないんだよ」
「何を言うんですかい?アッシから見りゃ
坊ちゃんみたいな人生は誰もが憧れますぜ」
男をちらりと見た後、青年は視線を落とし呟いた。
「だからウソっぽいのさ」
とても小さく、まるで自分にだけ聞かせるように呟いた言葉は
きっと誰にも届くことはない。
ロメオは、すぐに人の良い笑顔に切り替えて男に向き直る。
「さぁ、悪夢を最後までやりきろう」
結婚式まで君は目覚めることはないと囁いた言葉に
返事の代わりに零れたのは透明な雫だけだった。
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彷徨いアリス