「蔵馬……後は頼んだぞ」

コエンマに少年は頷き、帽子を深くかぶりなおした。
当然、目立つ長い赤髪も今日は帽子の中に仕舞われている。

犯罪者の身分でまた霊界に来れるとはと感慨深く思いながらも
今は少女の奪還が先だ。

現在、屋敷では不自然なほど急ピッチで挙式の準備が行われている。
そのためパーティー、そして婚約発表の時同様に人の出入りは比較的行われていた。

しかし相手も警戒を怠っているわけではないだろう。
そこで元盗賊として隠密行動が得意な蔵馬に白羽の矢が立った。
本来であればワシも行ければとコエンマも嘆いたが
コエンマは先日のパーティーで面が割れている。

パリッと燕尾服をまとった蔵馬は、屋敷に難なく侵入すると
注意深く行きかう人物を伺った。

瞳が警戒心から細まる。映像で見た青年が今回の首謀者だ。
そいつには一番注意しなければと帽子を深くかぶりなおすと
隠密用の笑みに切り替えて、流れるような動きで自然に人混みに紛れていく。

143(189)
back
彷徨いアリス