「この度はご成婚おめでとうございます。
祝いの花束も届いておりますが、どちらに飾ればよろしいでしょうか?」
思ったよりも難なく潜入できただけでなく
かなり早くターゲットに接近できたので蔵馬は呆気ないなと内心苦笑いした。
屋敷の外は割と体格のいい黒服が囲んでいたものの
中に入ってみれば警備はかなり手薄だ。それどころか
忙しそうに宝石商やドレスの仕立て屋、メイドなどの従業員が
行き来しているため、誰も侵入者の蔵馬に眼をとめることもない。
大ぶりの薔薇の花束を抱えた蔵馬は花屋か
忙しすぎて臨時で追加した使用人の一人だと思われた程度だろう。
ちらりと目の端で青髪の男をうかがうも、彼は特に警戒すらしていない。
体格も少し細身、自分がいうのもなんだが優男という印象をうける。
身のこなしは華麗だが、武を学んだ者のような覇気などは感じない。
よくも悪くも、一般人の金持ちだ。花束を少女の横のテーブルにあった花瓶に飾るように言われ
それを丁寧に飾る仕草をしながら、視線では少女をうかがう。
「分かった。行きます。――あ、花を飾ったら出て行ってくださいね。
すぐに彼女は、ドレスの着付けが待っているようなので」
入ってきた従業員に何か耳打ちされたロメオは静かにうなずくと
予想外にも少女と蔵馬をおいて出ていった。
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彷徨いアリス