その直後、タクシーが急ブレーキをかけた。
運転手の男が震える指で前方を指さす。
「あいつはッ…」
ヴェネチアンマスクの男が、派手な衣装で車の前に立っていた。
頭に耳のついた頭巾をつけ、目が痛くなるほど毒々しい色彩の服。
尖った靴と、マスクからのぞく口元が不気味に弧を描いている。
まるで道化師のような男の、禍々しいオーラが運転手を圧倒した。
「娘を……こちらに返しなさい★」
高いとも低いとも言えない不気味な声が頭をゆすった。
「どきそうにないですね……俺が行きます」
静かに、怒りを抑えた声が車内のドアを開けた。
コエンマは相手にするなと叫んだが、こいつがどかなければ車は進めない。
「ローズウィップ!!」
薔薇の鞭を出した蔵馬が、道化師の男をツルの鞭で拘束したまま
車が通れるように、道幅に引き寄せる。
「おやおや、乱暴な子だ♪」
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彷徨いアリス