完璧な人生
「よくやった、ペルソナ」
仮面の男が青年にゆっくりと頭を下げ、右手側のマントを持ち上げた。
マントの中で宇宙のような深い闇がグルグルと渦巻いた後
色とりどりのハンカチを繋げた布に拘束され、ぐったりとした少女が
マントの暗闇からゴロっと床に転がり落ちた。
「まさか屋敷にまで侵入してくるとは……。
――コエンマ様もよほど焦っておられるようだ」
言葉とは裏腹に表情を崩さない青年は、少女の固まった姿に視線をとめる。
「おい……彼女に何かしたのか?
契約では、傷つけないはずだっただろう」
強い口調で問えば、仮面の男はおどけた様子で肩をすくめた。
「とんだじゃじゃ馬だったもので……少し意識を操っただけデス♪
お望みとあらば、すぐにでも解けますよ」
暴れてもよければと仮面の口の端をこれでもかと不気味なほどに上げる男に
青年は不快そうな目で睨んだ。
「そこは薬の力でどうにかする。命令だ、今すぐ解け。
お前の命令で動くなぞ、不愉快だ」
仮にも僕の妻になる女性だぞと釘を刺せば、何が面白いのかクスクス笑いながら
仮面の男は笛を高く、そして長く吹いた。
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彷徨いアリス