「心外ですね……そんな怯えた顔されると」
困ったように笑い、視線を外しながら仕方ないかと呟く青年。
少女は再度腕を動かそうとしたが、自力ではピクリとも動かないので諦めた。
恐らく今までのように何らかの薬が使われたのが、動かない体の様子から分かった。
震えることすらできず、けれどベッドに横たわれるほど安心できない。
どうにかいつもより上手くいかないコントロールで霊力を操り
威嚇するようにバチっと体の周りで火花を散らさせれば
青年は呆れたように肩をすくめた。
「今の君のそれくらいの霊力なら静電気がはねた程度の痛みしかないですよ。
強引にさらったことを怒っているのなら申し訳ないです。
ですが僕はこれから君に最高の人生を保障しましょう」
君が望むなら物も人も全て手に入ると悪魔のような笑みを浮かべるロメオに
少女は視線を落として首を触れない代わりに拒絶の声を出した。
「そんなものは要らない。人生に必要なものがあるのなら
それは私が……自分で手に入れるべきもの!!
それでも手に入らないものならば私は望みもしないし、諦めることも出来る!!」
「今だけさ、そんなことを言っていられるのは」
「ロメオさんだって……私から見れば恵まれているように見えるよ!!
――私なんかを無理やり誘拐しなくとも、そのままで十分不自由はないでしょう!?」
キッと睨みつければ、先ほどまで人の良さそうな笑みを浮かべていた青年の顔から表情が消えた。
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彷徨いアリス