「君も……そう思うんですか?」
無表情のまま近づいてくるロメオにヒッと思わず息をのんだ。
近づくにつれ、だんだんその無表情が悲しそうにも見えて
少しだけ胸が痛くなる。
「恵まれた人生……完璧で何一つ不自由のない生活。
でもその中にいる人物は果たして幸福なのだろうか?」
にらみつける少女の視線をものともせず、そのままベッド横にあった
スツールに腰掛けながら青年は言葉をつづけた、少し悲しそうな顔で。
「もうすぐ婚約する君には伝えておこう。
もちろん、これを聞いて君の意見が代わることを願っているのも本心だが。
一番はこれでも申し訳なく思っているんだ」
ロメオは今までのこと、自身が心の奥底に秘めていたことを話した。
物心ついた頃から誰もが僕の人生を羨ましがったこと。
大きな病気をしたこともない丈夫な体、恵まれた容姿。
生まれたときから最高の肩書きや地位を持ち、家族の仲も悪くはない。
ただ今までどこか物質的には満たされている反面
何かが足りないという飢餓感に襲われていた。
それは年を重ねるごとに大きくなっていく。
そしてその声はだんだんと自分にプレッシャーとなっていった。
誰よりも恵まれた人生でスタートしたのだから
それに見合う暮らしや生き方をしなければならない。
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彷徨いアリス