朝がくるたびに、今日という美しさに喜びの息をもらした。
あの頃、すべてがキラキラと輝き、新しい刺激に満ちていた。
もう少し大きくなった頃、兄からもらった美しい挿絵の入った本。
はじめて読んだ恋の話に小さな胸は苦しいほど高鳴ったのを今でも覚えている。

そこに出てくる王子様はどれも兄に似ていた。
あたしより大きくて、美しくて、儚いように見えてどこか
時折見せる凜とした表情すべてが完璧で。

いつか父の腰にあった、鞘に収まったままの剣を思いだす。
宝石の散りばめられた美しい宝刀。

その宝刀がいつの日だったか、ふと憂いを帯びた兄の横顔と重ねって見えた。
ああ、きっといつか訪れる大切な人のためだけに抜かれるんだろうか。
そう思うたびにチクリと胸が痛んだ。

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彷徨いアリス