あたしの王子様、その美しい瞳が困ったように見つめるのは
あたしだけに許されたものだったはずなのに。
きっと誰かが魔法をかけたんだわ。
いつの間にか曇ってしまった兄の瞳。
美しい輝きは衰えなかったが、あたしを見つめている時でも
どこか遠くを見ているような曇りがあることに気づいたのは
自分のドレスの裾を踏まなくなった頃からだった。
最近の兄の瞳は、とても切なく揺れて
焦っているような、誰かを探しているような
近くにいるはずなのに、どこか遠くを探すその姿に
言い知れぬ恐怖と絶望を感じた。
兄の探す何かになれなかったあたしを許してください神様。
いつかその瞳があたしに戻ってきますように。
ふとした時に気づく、可愛いぬいぐるみの瞳から
光がなくなったのを見て現実に引き戻されるような悲しみ。
あなたの瞳を取り戻すために
あたしは必死にあなたの気を引いて見せた。
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彷徨いアリス