薄れていく視界の中、少女の背中が遠ざかっていく。
待ってくれと手を伸ばしたが、強制的に目の前が真っ暗になり届くことはなかった。
「ねぇ!!起きなさい!!」
どれぐらい意識を失っていたのだろうか。
高い声が真っ白な世界で響く。それが酷く頭に響いた。
左耳にキーンと耳鳴りが残り、男は起き上がれずに顔をしかめる。
体中が痛むし、独特の香りが鼻孔を刺激した。
皮膚のヒリついた痛みでようやく肉が焦げた匂いだと気づく。
痛む頭をなんとか起こして声の方を見れば
開けた視界いっぱいに桃色の綿毛が広がった。
その間も甲高い声は何度も繰り返して問いかけてくる。
次にコエンマが目についたのは、あふれ出しそうな湖の
目が覚めるような碧さ。
「#紅葉#!!――いっ…」
弾かれるように飛び上がった身体が悲鳴をあげ
ぐっと苦痛に顔を歪ませてうずくまる。
「やっと起きた!!死んでるかと焦ったわよ!!」
耳元でキーキー喚くなと言いたかったが
コエンマはそんな気力すらなく顔をしかめるだけだった。
だんだん痛みが強くなってくる。
熱風で喉もやられていたのか、痛みに少しむせた。
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彷徨いアリス