「紅葉は……自分が襲われているとは思わないのか?」
男が怪しく唇の端をあげ挑発的な笑みを浮かべた。
取ってくわないと言っていた言葉をふと思い出したが
ちょっとこれ色んな意味で食べられそうになっているのではと
赤い顔で慌てていると、今更気づいても遅いぞと男は笑う。
こういう時は目を閉じろと囁く声に思いっきり首を横にふりながら
そういうことは恋人とすべきだと声が裏返りながらも悲鳴をあげれば
俺がそこまで節操なしに見えるかと少し怒られた。
「いいか?少しだけ種明かしをするなら……俺は10年後から来た。
そして、お前とは祝言もすんだ仲だ。こういうことをしてもなんら問題はない」
「10年後!?しゅっ祝言?」
慌てる姿が面白いのかゆっくり飲み込めと男は唇の端をあげる。
「私の10年後の旦那?――あっあなたが?」
「はっ…その響きも悪くないな」
可愛い口から俺を呼ぶ名が出るのは存外嬉しいなと
まるで名を呼んだお礼のように唇の端にキスをされて硬直する。
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彷徨いアリス