あ、また揉めたかと思えば急に赤い髪の人が背を向けた。
奥の方に消えていくのを、追いかける黒髪の仲間と思われる少年。

「くらま…?あの人の名前か」

盗んだ盗賊達の名前もそういえば聞いていなかったなと思いながら脳内でメモする。
あっあの人が素敵だから覚えたいとかそういうわけじゃないんだからね。
うそです。そういう下心ちょっぴりあります人間だもの☆

「おいっこらぁ!!人がせっかく尋ねてきたのに!!」

「たずねたというか押しかけたけどね」

私達のコントのようなやりとりが面白かったのか、残された鬼のような大柄な男は
不気味な笑いをうかべ、力ずくで奪ってもいいぜと宣戦布告せんせんふこくしてきた。

あおってくれるじゃないかと表面では苦笑して呆れながらも
内心冷ややかな気持ちだ。――久しぶりの戦闘だからじゃない(まぁそれも多少はあるけど)
この男の能力の未知数なところ、そして喧嘩はともかく霊力が霊丸が一発程度だと聞いた幽助と
その幽助より少しだけ霊力があるものの体力だけでなく体格差で圧倒的に不利な私。

がたいの良い人間じゃないかも知れない男とどうやって戦うか。
相手はどうでるつもりか、と色んなことがよぎった。
幽助は早く喧嘩けんかがしたくて待ちきれないといった感じなので彼のフォローもやらなきゃなと心の中で泣いた。

そんな私達をあざ笑うかのように、パフォーマンスのような腹ごしらえだと餓鬼玉を取り出した男が
目の前で魂をほおばる。あの男の子の魂だと聞いた幽助の動きは武器を取り出そうと構えた私より早かった。
すかさず腹に重いりを入れ、間髪かんぱつ入れずにパンチを決める。

その手際の良さにマジでこの人喧嘩慣れしてるわとビックリしつつもすぐに男の手から落ちた餓鬼玉を拾いに行く。
男の子の魂が戻っていくのを見守っていた幽助もハッとして餓鬼玉を持つ私に視線を戻した。

「よしっ。餓鬼玉は取り返したな。――それにしても見かけ倒しなやつだったぜ」

「でも幽助、マジで一撃入れてたよね。アレ人間なら起き上がれないって」
ただ、相手は人間じゃない。絶対起き上がるはず。
少女の瞳が警戒するように細くなったのに、まさかと幽助も笑って振り返ったがさっき倒したはずの男が平然と立っていて驚愕きょうがくの声をあげた。

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彷徨いアリス