死の恐怖で声が震えないように、聞いていないはずの幽助に懺悔するようにこぼした。
「苦しんで死ねぇ!!」
男が蹴り上げようと足を後ろに引いた瞬間、庇うように幽助におおいかぶさる。
男の足が風をきりながら私達に向かって来るまさにその瞬間、聞き覚えのある声が響いた。
「誰かこっちにいるよ〜」
「チッ…人間が来やがった」
この高い声は……ぼたんねーね!?そう思ったのもつかの間、男は面倒くさそうに辺りを警戒しだした。
その間も周りでぼたんとおぼしき声は聞こえ続ける。
「くそっ…後もう少しで殺れたのに………。
おいガキども、これに懲りたら人間の分際で俺たちに近づくのはやめることだ。
せいぜい自分達の命の心配でもしてなぁ!!」
そう言うと男は逃げるように去ってしまった。思わず緊張の糸がきれてへたりこむ。
しかし腕の中のぐったりした幽助に気づいて、自分の背中の痛みを忘れて慌てて手のひらに霊力を込めた。
大丈夫……息もしてるし骨が折れた様子もなさそう。
雨で視界が霞む中、救急隊員のように寝かせた幽助の胸の前で
両手をあてて意識を集中させる。霊力は薄い膜のように、触れた部分から幽助の身体を覆い出した。
緊張と同時に出ていたアドレナリンが切れたのか背中が息をするたびにズキズキ痛む。
体中が筋肉痛のような痛みをあげていた。恐らく久しぶりに使いまくった霊力の反動だろう。
冷たい雨に打たれて私まで気絶しそうだった。
そんな中、ぼたんが慌てて駆け寄ってきたのに薄い笑みを浮かべて私はようやく心の底から安堵した。
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彷徨いアリス