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「秀一っていうのは人間界での俺の仮の名前さ」
……やっぱり。会話していた時も何度も蔵馬のことをそう呼んでいた彼女。
そしてそれに全く疑問を持つこともなくその名で呼ばれているのが当たり前のように接していた彼。
驚く幽助には悪いけど、全て合点がいく。
ただその後に告げられた仮の母親だとか父親が過去に亡くなっていたことなんかは
本当に面食らった。だって、彼は妖怪サイドだとばかりに思っていたから。
失礼だけど、人間くさいなってことに驚かされたのだ。
今まで妖怪は一種の仲間などのコミュニティーには属していたものは見たことがあった。
しかし、人間を家族と呼んで生活をともにするのは見たことも聞いたこともない。
「15年だまし続けて育ててもらったってわけさ」
「15年間だましてって……でもあの人はまるで本当のお母さんみたいでした」
「……そうだね」
私の本心から口にした言葉に、彼はポーカーフェイスを崩して
ようやく驚いたような顔をしたが、すぐに何かを諦めたような笑みで笑った。
そして、妖狐の蔵馬として過去には妖怪だったことや
封印や暗号をといて古代の宝を盗むいわゆる盗賊だったこと。
「妖狐…盗賊……」
何か頭に引っかかる気がした。
思い出したい記憶がなかなか思い出せない時のよう。
しかし彼は私の小さな呟きに気付かずに、そのまま続けた。
「しかし15年前、強力なハンターにかなりの深手を負わされた」
その後、霊体の状態で人間界に逃げ込みある夫婦の子供になった。
彼は10年くらい我慢し妖力が回復するのを待って姿を消す予定だった。
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彷徨いアリス