「楽に死ねると思うなよぉ」

不敵な笑みで挑発する乱童に幽助も抵抗する。
しかしどんなに力をこめても巻き付いた糸はビクともしない。

そりゃあそうだ。いくら霊界探偵とは言え、幽助の力なんて
人間で多少パワーがあるレベルに過ぎない。
いや、むしろ世界には力自慢は古今東西にいるだろう。
乱童が倒してきた武闘家たちだって、まだ身体の出来ていない中学生の幽助よりは
パワーがある大人がほとんどだったはずだ。

そんな力できれるなら乱童もここまで挑発できるわけがない。
締め上げる糸も不安だったが、じわじわと首にまきついた真綿をしめるように
ゆっくりといたぶろうとする乱童にイヤな予感しかしない。

案の定、乱童は糸がいかに丈夫なのかを実践するために
大きく振り回しはじめた。――幽助をまきとったまま、さながらメリーゴーランドのように
ぐるぐると回る。その間も幽助は必死に抵抗を続けていた。

ぼたんが小さく悲鳴をあげる。私も息をハッとのんだ次の瞬間
顔から幽助が地面に叩きつけられた。しかも一度ではない。
何度も、今度は背中から腹からと打ち付けていく。
その様子は本当に非現実的すぎて一瞬、これは現実なのかと面食らったが
すぐに幻海に止めてもらわなければと気づき、師範に視線を送る。
目だけで止めますよ?と問いかけたが、老婆は厳しい顔で首を横にふった。

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彷徨いアリス