そう、さっきまで私と優雅ゆうがに追いかけっこしていた化けもんの仕業だというのは一目でわかった。

これには流石さすがの私もひっと息をのむ。

「ちょっ…あいつどうにかしてください!!」

綺麗な女性(でもどうも男っぽいような気がする)人に懇願こんがんすると私を背にして立って、服の隙間から刀を取り出した。

「うわ…この人今までよく銃刀法違反じゅうとうほういはんで引っ掛からんかったな」
思わずボソッと呟く。黒髪の麗人れいじんはそんな事は気にせずに刀を慣れた手つきでさやから抜いた。

六幻むげん厄災招来さいやくしょうらい……界蟲かいちゅう一幻いちげん!!!!」

そう叫ぶと、その化け物を刀で一太刀ひとたちにする。化け物は断末魔だんまつまをあげながら灰と化した。



………
……



「あいつ…死んじゃったの……?」
力が抜けたようにへたり込む私に、黒髪美人(勝手に命名)は、ああ…と答えると持っていた刀をスルリと鞘に納めた。

急に涙がこぼれてくる。
何でだろう。私……私さっきまであいつにおそわれかかってて……それで死にそうになってたのに……。


「殺す必要はなかったんじゃないの……?」考えるよりも早く言葉がこぼれていた。
思ったより震えなかったが、声色にはまるで糾弾きゅうだんめいた色が含まれていて、自分でもびっくりした。

自分が助けてって言ったのに……身勝手だけど、でも私はこれを望んでいたわけではない。
今の状況は最初から最後までフルスロットルでカオスだけど、自分の考えはハッキリしてる。

私は、ただこの生き物から逃げる事しか考えてなくて……その結果、こいつがどうなるかなんて先までは無責任にも考えていなかった。
本当は武器を抜いた段階である程度、察しがついていたはずなのに………。
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彷徨いアリス