短いファンファーレの後、教祖らしきローブをまとった
恰幅のよい老父が複数の女性信者に連れられ登壇した。
「我らが偉大なる教祖マリシャス様の奇跡の御業を
とくとご覧あれ!!」
女性信者の高い声が広場に響くと同時に、壇上で布を
被せられていた人影に人々の注目が集まる。
すぐにおおわれていた白い布は取り払われ、顔色の悪い中年ほどの男が
椅子に腰掛けた状態で姿を表した。
地割れのように信者は歓喜の声をあげ、信者ではない観客も感嘆の声をもらす。
この場にいるほとんどが教祖の力に心底ほれ込んでいるようで
今、変なことを言えば刺されかねないなと流石の私でも口をつぐんだ。
「あれが……蘇え…いや、復活したとされる男…」
一見すると怪しい所は見られない、至って普通の男性だ。
壇上には男性の家族だろうか、駈け寄られ教祖に頭を垂れて感謝の涙を流していた。
「あ、神田……」
急に人込みの中、
踵を返し立ち去ろうとする男を追いかける。
帰るなら一言くらい言えよと内心悪態をつきつつも
どこかホッとしている自分がいた。
一刻も早く、こんな気味の悪いところから立ち去りたい。
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彷徨いアリス