「窒息してはいけませぬから……ゆっくりになりますが」

申しございませぬと小さく一礼のあと、男は薬瓶から
液体を口元に垂らした。

少女の細い喉が嚥下えんげするたびに上下するのを安堵あんどした顔で見つめた後
まるで母親が赤子に乳をやるように、根気よく液体を飲ませ続けた。

「化学班が作ったものなので、即効性があるはずです。
――効けばよいのですが」

その間、誰もこの部屋に入ってこないように
そして私たちがいつの間にか消えたことに気づかないように祈り続けた。

薬を飲み干して10分ほど経っただろうか。液体がゆるやかに身体に吸収されてきたのか
指先からじょじょに自由に動かせる感覚を取り戻し、思考もハッキリとしてくる。
立てますかとうながされ、ゆっくりと立ち上がれば少しだけよろめいたものの
すぐに自分の足で立つことが出来た。

「良かったです。私もいつまでもあなた様を背負ったままでは怪しまれます。
こちらのローブをお羽織下さい」

よ、用意がいい〜。今期最高の良い男だわ〜と感動していると
そういえば、もう一人の色男はどうなったと思い出した。
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彷徨いアリス