「彼氏じゃないですよー。何かそこらへんに落ちてたので拝借しました〜♪」
一応、盗んだではなく落ちていたと誤魔化しておいたぜ。
しかし、あんな顔だけのDVしそうな男なんてご免だね。あいつに走るくらいならツインテールの可愛いチャイナガールに走った方がいいな。
――想像してニヤケていると、男性が苦笑しながら呟いた。
「なら……一般人か?」その瞳は呟きに反して、底の見えない眼鏡の奥で怪しく細まる。
「え?――何か?」
「いいや、何でもない。――おっ……あそこで呼んでるのお嬢さんの連れじゃない?」
彼の指さす方向に促されて頷くと、朝もやの向こうで何かが私の名前をしきりに呼んでいる。
チッと面倒くさそうに舌打ちをし、私はきびすを返して男性に手を振った。
「それでは、さようならノリの良いお兄さん!」
男性も優しく微笑む。――そして少女が朝もやの中を走っていくと、堪え切れない笑みをこぼして、怪しく呟いた。
「命拾いしたね。――お嬢さん♪……あぁ、後もしかするとそのお仲間さんもかな?」
今日は俺、機嫌が良いから表のままで居たいんだよね……と男の怪しい笑いと意味深な言葉は、彼らに届く事はなかった。
………
……
「で、ここの奇怪の原因は分かったの?」
現在は二人の任務先とやらに来ている。私の問いかけに、アレンは静かに首を振った。
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彷徨いアリス