金切り声をあげながら、腕の向こうでアンナさんもどきが言い訳がましく叫んでいた。

『許せない!!――男は自分の欲ばかり!!』

何度か水中で猫パンチのようにもがいていたが、とうとう捕まれて息をのむ私。
腕から伝わってくるのは先ほどのアンナさんとは違う激しい憎しみの記憶。

記憶の中に移る男性はアルマンを筆頭に、どいつもこいつもクズ揃いで吐き気がした。
アルマン、怪しげな男、金持ちになりたいとか女にモテたいなどと必死に祈りにくるここ数日引きずり込まれた男性達。

思い返せば結局アルマンはアンナを村の中では若く美しいから結婚を迫っていただけで
本当は貧乏をいつか脱却し、金持ちになりたくて仕方が無かった。
その矢先の城の警備として出兵。背中越しに涙をこらえるアンナをあざけるように男は薄く笑った。
城では男性不足で若い女が余っている。アルマンはアンナへの恋心より出世欲が勝った。

あわよくば自分が城の王になるために惨めな出世欲と財産目当てにあの女と結婚したものの
アンナが死んだことに激しい焦りを覚えた。
彼女がいつか化けて出てくるのが恐ろしくてたまらなかった。

そこで彼女が流行病を止めるためだとか村の繁栄を願い湖に命を捧げたのだと
ウソ八百を並べ立て、勝手に聖女扱いして自分を安心させることにした。

しかもその聖女の力がついていると村人達を戦争に駆り立てた。
最終的に数年で破産し女に捨てられ、自身も病気で苦しんで早死にすることになったが
彼は最後までアンナの死を悔いることはなかった。
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彷徨いアリス