「ねぇ……起きてくれない?」

今度は全然優しくもない、しかも聴くと何故なぜ悪寒おかんが走るような声が降ってきた。
と同時に私のプリティーなひたいにビシッと弾かれたような衝撃しょうげきがくる。

「はいいいいいい!?起きてます、起きてます!!目をあけないまま起きてましたぁっ!!!!」

それを寝ている状態だと言いたげな目で見つめてくる彼。

今朝素晴らしいアルマゲドン(お迎え発言)を私にピンポイントで投下してくれた雲雀くんが
ニヤリと意地の悪そうな……いや、実際に意地は悪いだろう笑みを浮かべ……「何か?」

「何でもねぇでございまする!!」引きつったスマイルをすぐに浮かべる、立場が分かってる私。

首が引きちぎれて、飛んで行きそうな具合で左右にふる。

ただのデコピンと思われるの割には、じわじわ後を引く痛みにおそわれつつ
何故、彼がここにいるのだろうか?とふと疑問が沸いた。

だって……君確か他校せい「ああ……僕は並盛圏内けんないならどこでも出入り自由だからね」

私は一瞬フリーズし、次の瞬間には少しずつ表情筋ひょうじょうきん死滅しめつしていくのを確認する。
流石に笑えないジョークだ。

どんだけ、並盛クラスタなんだよ……と同時に、有無うむを言わさず武力行使ぶりょくこうしの出入りだろうと
心の中で舌打ちを何度も繰り返した。

もうこの街に逃げ場はないと遠回しに告げられた気分だった。
外来種に生存をおびやかされる絶滅危惧種ぜつめつきぐしゅの気持ちがよく分かる。(しかも、だいぶ食べごろなのも笑えない)


マジで家に帰りたい、そして一生部屋から出て来たくない……と
つい二日前も感じた気持ちが何度もハートをえぐった。


「えっ……えっと、雲雀さんは並盛が好きなんですね………」
視線を外しながら、何とか生きていた表情筋でどうにか笑みを浮かべる。

我ながら、何でこんな言葉が出てきたのか分からない。(多分、逃げ出したい恐怖心からだろう)
まぁいいか、と話のついでだし付け足した。

「ここに越してきてまだ1年立つかくらいですが……今まで暮らしてきたどんな所よりも私は馴染なじめてる気がします」

私の突拍子とっぴょうしもない並盛マンセー発言に一瞬珍しく驚いたような表情を浮かべると、珍しく素直に笑みをこぼした。

「まぁ……僕の街だからね………」

これさえなければ、彼は立派な街を思う少年なんだけどなぁ……。
時々、敵しか作る気ないんじゃねーの的な強気で横暴発言さえなければ、イケメンだしだいぶ優良日本男児ゆうりょうにっぽんだんじだ。

けど、そんなの何か彼じゃない気がする。


「そういえば……帰らないの?」

雲雀が私から視線を外すと、窓ガラスの外にチラリと視線をうつしたので思わず視線を追う。
もうすでに真っ暗になった空が、他人事みたいに窓ガラスにうつっていた。


思わず、ガタッとイスを倒しつつ立ち上がると、あせったように少年と窓を交互に見つめる。
冷や汗が今朝のアルマゲドン投下以来、ぶわっと吹き出し……身体はガクガクとゆっくり振動しんどうを始めた。

「〜!?――もう、こんな日がくれてるんですか!?――えぇっ……今何時か分かりますか?」

「ん?……多分、7時半とかじゃないかな………」

「Noooo!!やばいよ、やばいよ……再放送がふjkjdjmsoo!!!!」

最後は声にならない悲鳴をあげ、ジーザズジーザス言いながら教室をうろつく私に
雲雀は奇行種きこうしゅ(痛い奴)を見るような冷めきった視線を送っていたことは言うまでもない。



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彷徨いアリス