「えっと……それでは、帰りを急いでいるので失礼します」

得意のまゆをさげた笑みをうかべて、私は足早に相手の横を通り過ぎた。
少年は一瞬目を丸くすると、すぐに瞳を怪しく細めて笑みを張り付ける。

「ええ、そのようですね……」

少年の横を数歩通り過ぎると、やはり思い過ごしだったかと息を深くいた。
危ない、被害妄想で相手を怪しい人って決めつける所だったよ。

あ……そうだ。彼にも伝えなきゃ………。

今度は、心の底から安心しきってほほを緩めながら私は振り返り彼に言った。


「ここ……今の時間帯は危ないらしいので……どうかお気をつけっ――」


あれ?こんなに地面が近かったっけ?――それに、視界がぐるりと回ったかと思うと
ぷつっと途切とぎれて暗くなった。

それを確認した所で、私の思考も途切れる。


倒れた丸く小さい身体に、のぞき込む少年の影が落ちた。

「ええ……ご忠告ちゅうこく感謝かんしゃします。――身をもってお伝えしてくれるなんて、本当に面白いおじょうさんだ」

クフフと独特の笑いをこぼし、皮肉めいた台詞せりふが少女に届く事はなかった。



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彷徨いアリス