「君には同情するよ。こんなこと僕にはめんどくさいだけだけど…、君の場合はこわいだろう?」

こんなこと望んでいないと私の頬を撫でる指先の冷たさに我に返った。
私の幼さを残した丸みのある頬をまるで輪郭を確認するように指がスッと伝う。

いつもは真っ赤な顔で何をするのかと慌てるところだったが
それはあまりにも自然すぎて、つい彼の美しい瞳だけでなくバックの夜空からも目が離せず
ぼうっと見つめることしか出来なかった。

涙を流したわけではないけれどまるで流した涙をぬぐうような動作と
彼の静かな……けれど同情や憂いを孕んだような瞳に
私まで悲しくなって涙は出さずに、けれど泣き出しそうな顔を作らないように
がんばって頬の筋肉を引きつらせて笑みを浮かべるように努力する。

そんな私に彼は驚いてスッと手を離した。

「ごめん」

一言そうつぶやいて。

「いえ…謝らないでください」

どうしていいか分からず、居たたまれなくなって私から先に
視線をそらして引きつった笑みを浮かべた。

あ、と今なら聞けるかもと思い勇気を出して問いかけてみる。

「雲雀さんはどうして私なんかを気に懸けてくれるんですか?」

だって、普段は他人なんか気にしないような人だ。



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彷徨いアリス