「全く覚えてないです」

でもおしゃべりな私のことだ。思いついたら口からマーライオンみたいに
言葉を吐き出すモンスターだから多分そうなんだろう。

「それで私のことを気にかけているんですか?」
前はどうしてだったか覚えてないとか口にしたくせに
今日はやけにペラペラしゃべってくれるんだなと怯えつつ
黙って聞き役に徹することにした。

「僕もそれが理由なのかは分からないから言えない。
ただ、ふと出会った時の事を最近思い出したから。
――その後も君とは何度か会ったりして
なんて言えばいいか分からないけど…」

「けど…?」

急に黙り込んだ彼を見上げると、私の顔に影が落ちた。
彼の長い睫毛が、スッと通った切れ長の瞳がどアップで私を見つめている。
それこそ、彼の瞳にうつっているのが分かるほどに。

慌てて後ろに身を引こうとすれば、ベンチから転げ落ちそうになった。
彼が長い腕で瞬発的に抱き留める。その間も視線はぶれない。

「君とはなぜか…関わらずにはいられない」

顔がすごく熱い。この熱が伝わったのか、彼の頬も少しだけ赤らんで見えた。



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彷徨いアリス