相変わらず目の前では激しい攻防戦(こうぼうせん)が続いている。
視界に入る映像だけ切り取ると、年端(としは)もゆかぬ少年が大人顔負けのアクションを繰り広げてるなんて
それこそまるで映画の世界や大好きなアニメのようで、とても非現実的だった。

ぼうっとそこだけ切り取ると、私は関係のない世界のようにさえ思えてくる。

いつだってそう。ただ平凡(へいぼん)に生きて来たし、どっちかというと学校でも日常でも
底辺で生きてきたような人間なわけで正直な話、助けに来てくれた雲雀さんでさえ私は日頃疎(うと)んじていた。

私の平凡を取り上げないで欲しいと願って、先行(せんこう)する噂(うわさ)を鵜呑(うの)みにして彼を怖いとさえ感じていた。

それなのに、彼は私のために戦ってくれているんだ。
どんどん意識が戻った頭が覚醒していくたびに………さっきの骸の言葉も思い出してしまって苦しくなる。

『これなら雲雀恭弥が気に入る理由も分かる気がしますね』

くっと眉根(まゆね)を寄せて下唇(したくちびる)を噛んだ。――視界の隅(すみ)で揺れる鎖(くさり)は解(ほど)けそうにない。

雲雀が骸の第二波(は)の攻撃におされて、身体を少しのけぞらせた時、鼓動(こどう)がドキリと少しだけはねた。
冷や汗が背中を伝い、サァッと血の気(け)が引いていく。

ダメだ。ダメダメ……勝って貰(もら)わなきゃ………!!

目頭(めがしら)がぶわっと熱くなる。――このまま恐怖の淵(ふち)に落ちてしまいそう。
いっそのこと、落ちてしまえたらどれだけ楽だろう、と妙に冷静で理性の働く脳が必死に決壊(けっかい)しそうな私の瞳の湖を辛(かろ)うじてとめていた。

そうだよ……私のせいで雲雀さんに迷惑かけてるし、雲雀さんは私のために戦ってくれてるんだよ。

これが美少女なら涙を流して、美しい髪を振り乱して二人とも辞めてって懇願(こんがん)することも
悲劇のヒロインぶって、ただ泣くだけも許されるかも知れない。

けれど、これは現実で……冴(さ)えない私がそんなことをしたところで
かえって邪魔(じゃま)になるのなんか目に見えてる。

だから……私は今できることをしなきゃ!!

「ひっ……雲雀さん!!――がんばって!!」

土煙(つちけむり)が舞い上がる中で、私の叫びを聞いた雲雀さんと目が合った。
いつも弱気でヘタレな私しか知らない少年の一瞬だけ驚いたような顔に、私も泣きたくなるのをこらえながら
精いっぱい強気にほほ笑む。――目が合った彼もフッといつもの余裕そうな笑みを取り戻した。

「なっ……何を今更(いまさら)、そんなボロボロな身体で……なっ!?」



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彷徨いアリス