『僕が直接迎えに行った方がいいかい?』
ダメ!!
『次そんなこと言ったら咬み殺すから』
考えるな!!――何度も理性がそう叫ぶ。
それでもその時の言葉と、切れ長の輪郭からのぞいた黒曜石のように怪しくて
それでいて美しくて目をそらせない黒い瞳が、私を見つめているあの映像。
『君……今日はまだ逃げないんだね』
それは美しい絵画のように焼き付いて離れない。
こんな風に心を動かされて、苦しくなったり……。
『君は……自分が思っているよりも悪くないよ』
うれしくなって、息が弾み……頬が、体中を火照らせることが分かっているのに。
『君とはなぜか関わらずにはいられない』
理性では、忘れなくてはと思う。こんな自分が期待なんかしてはダメだって。
だけど、理性以外の全てが忘れるなと叫び返されている気分。
心の中では少しだけ焦るような、疑問だけがバーッと浮かんでは流れていく。
心臓を強くノックするように、私の小さな身体を思い切り揺さぶるように。
ああ、バカだなぁ。明日は大事な試合で……命がかかってるのに。
さっきまで心配だった勝敗が、いつの間にかピンク色の妄想に変わっていて
私ってどこまでも自分勝手なのかもと枕につっぷした。
心の中で叫んでる感情や、思わず潤んできた瞳を上から強く押さえつけるように。
232(431)
→|
back
彷徨いアリス