肩に大きな手が置かれた、少しだけすねたような顔をした青年だったが
すぐに子供を諭すような顔を作り、ゆっくり唇を開いた。

「みんな必死に戦っている。そこだけは何があっても忘れるんじゃないぞ?
そこに誰が一番だとか、誰が劣ってるとかないんだ。
――みんな……一人ひとりが自分の戦い方で向き合ってる」

「一人ひとり…自分の戦い方」

そうだ。確かに誰もが苦悩し、驚愕し、それぞれがそれぞれの痛みを感じながら
どうにか向き合って乗り越えようともがいている。勝とうともがいている。

なのに、私は表面しか見ていなかった。
実際に戦っていないからと、私はその戦いに参加していない部外者の存在
そんな風にどこか考えて、実際に体に傷は負ってないけれど
皆と同じように、心の中は傷だらけになってた癖して平気なフリをしていた。

でも、ディーノさんの怒った姿に驚いて……ディーノさんの言葉に気づかされた。
頬がカーッと赤くなる。照れたからでなく、ディーノさんを傷つけてしまった羞恥心と後悔からだ。
涙がじんわりと目に浮かんできたので、悟られないように視線を落とす。

「すみません。確かに私の言い方だとまるで仲間じゃないみたいに聞こえてしまいますよね。
そんなつもりで言ったんじゃなくて……ええと、私…うっ」

言葉にしようと考えを巡らせた瞬間、もう駄目だった。
透明でしょっぱい雫がボタボタと目元から溢れてくる。
幼さの残る丸い頬を伝い、膝の上においた掌に零れ落ちた。



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彷徨いアリス