………
……

「良かったぁ。――目覚めないかと思った」
「ここは……?」

雲雀が意識を覚ましたのは、あれから2日後の病室のベッドだった。
美緒が張り詰めていた糸がきれたようにへたりこむ。

「雲雀さん。あれから2日間寝たまんま目を覚まさなくて……心配してたんですよ」

ホントに、治療後(ちりょうご)に再会した彼の姿は痛々(いたいた)しくて見てるこっちまでSAN置(さんち)がえぐれるようだった。
おまけに、長い睫毛(まつげ)を伏せた彼の姿はまるで精巧(せいこう)につくられた美しい人形のようだったので
ますます私の不安を駆(か)り立てる。

このまま目を覚まさなかったら……なんて。この2日間で何度思ったことだろう。

「あの後のこと……覚えてますか?」

あの日、急に骸が倒れた後、彼は慌(あわ)てて駆けつけた少年二人に抱えられてどこかへ行ってしまった。
一方取り残された私はしばらく呆然としていたものの、血だまりに倒れる雲雀さんに気づいて
慌てて彼の携帯で草壁さんを呼んで助けていただいことなどを説明した。

「チッ。今度会ったらかならず噛み殺す」

いつものように強気な彼に苦笑しつつも、視線を病室の床に落とす。
彼がこんなケガを負(お)ったのも私のせいだ。私がなぜかたまたま仲が良いだなんて目をつけられてしまったから……。
もし最近物騒(ぶっそう)な暴力事件が相次(あいつ)いでいて、強い人ばかり狙われるのがあの少年のせいだとしたら
いつか絶対に雲雀さんとかち合う事になるだろうけど……。

「私のせいで……「次」

「えっ」

「次、そんなこと言ったら噛み殺すから」

制服のネクタイをひっぱられて、近づけた顔が不愉快(ふゆかい)そうに歪んでいた。
いつもなら脅(おび)えるところだけど、今回だけは無性(むしょう)に悲しくて泣きたくなったのはきっと気のせい。

住む世界が違ったんだ



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彷徨いアリス