「雲雀さんみたいにいつでも気ままに
自由に飛び回れるわけないじゃないですかっ。
私は、もう傷つきたくないし……誰も傷つけさせたくない」
最後は尻すぼみになってしまったが、最後まで雲雀は黙って聞いていた。
言い終えてまるで非難めいた口調になってしまったと慌てて
少年の横顔をちらっと伺うも、相変わらず何考えているか分からない
涼しい顔で表情一つ変えない。
「僕に守られるのは不服なの?」
急に立ち止まった少年が向き直り、こぼした言葉に時が止まる。
一瞬世界すら止まったように感じたが
横を通る風が髪や木々の枝葉を揺らして現実に引き戻される。
「って言ったところで君を僕の手の届く範囲で
守りきるのは厳しいんだろうけどね」
質問しておいて、先に答えたのは彼の方だった。
「君は僕を自由に飛び回れると羨ましがるけど
僕は君のほうが自由だと思うよ」
こうしてイタリアにまで飛んでいこうとしていると
どこか穏やかでそれでいて何かを諦めたような声色だった。
ヒヤッとした指先に手を取られて、頬に熱が集まる。
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彷徨いアリス