この胸の高鳴りの正体は恐怖心からだ、落ち着けと必死に言い聞かすも
チラチラ見る雲雀の端正な横顔と、そんな彼と周囲からは仲良く見えていると思うと
少しだけ優越感(ゆうえつかん)というか、自己顕示欲(けんじよく)が刺激(しげき)されるような高揚感(こうようかん)が否めない。
でも次の瞬間には、全然つり合いの取れない冴(さ)えない自分が目に入りため息をつく。

多分きっとこんな人から羨(うらや)ましがられるような瞬間は訪(おとず)れないだろうな。
少し自嘲(じちょう)気味に肩をすくめて、前を歩く雲雀に追いつこうと向き直った時だった。
いきなり視界の隅(すみ)から現れた人影(ひとかげ)に弾(はじ)き飛ばされる。

「いったた……」

思い切り尻餅(しりもち)をついたし、その時に地面についた手も砂利(じゃり)で少し擦(こす)ってしまい血がにじむ。
けれど、心優しい少女はすぐ切り替えながら自身の痛みよりもぶつかった相手を気遣った。

「あっあの……すみませっ」

見上げた先には、かなりの強面(こわもて)の男性が二人立っていて息をのんだ。
や、やばい……どうしよう、でも相手もこんなワガママボディーと衝突(しょうとつ)して
もしかすると怪我したかも知れないしと、ヘタレだが勇気を振りしぼって、震える声で声をかけた。

「だ…大丈夫ですか?」

「おいコラァ!!ワレ、誰にぶつかっとんじゃ!!」

いきなり巻き舌の大声でまくし立てられ、息をのんで縮(ちぢ)こまる。
私以上に恰幅(かっぷく)がよく、派手な柄のアロハシャツっぽい服をまとった強面かつ
成金(なりきん)趣味っぽい指輪ジャラジャラの男性がまくし立てた青年を制止した。



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彷徨いアリス