「ああああああ兄貴(あにき)を離しやがれ!!」

「何、君も咬み殺されたい?」

「ひいっ!!」

……ぶっちゃけ酷(ひど)いかも知れないが、先ほどの怒りがまだ冷めてないし
なんなら最初から最後までノンストップで理不尽(りふじん)の暴力にあい続けている私としては
こいつらだけは心の底から雲雀さんに咬み殺してもらいたい気持ちだった。

しかし私は小さく舌打ちして、少年を見上げた。

「雲雀さん…離してあげて下さい」

一瞬驚いたような顔をするも、私の意見などまるでどうでもいいかのように男達に向き直る。
あー、多分これ彼の中で答え決まってるパターンだ。咬み殺すルートに分岐(ぶんき)してるわとため息をついて
もう一度、今度はハッキリと雲雀を見上げて告げた。

「では、私がこの人たちを許しますから気持ちは嬉しいですが離してあげてください。
人通りが多いこんな場所で乱闘(らんとう)騒ぎなんて良い迷惑です」

てっきりいつものように冷や汗をかいて、真っ青な顔で狼狽(うろた)えるのかと思っていたのか
意外なほど力強く、いつもの下手すぎる発言とは裏腹にピリッとした毒を孕(はら)んだ言葉に
またビックリしたような顔をする雲雀。黒曜石のような漆黒の瞳が、長い睫毛(まつげ)の下で細まる。

「…ふぅん」

パッと腕を放すと、男達は滑稽(こっけい)な動きで蜘蛛(くも)の子を散らすように逃げて行った。



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彷徨いアリス