拝啓(はいけい)、お父様そしてお母様。
普通ってなんですか?誰か猿(さる)でも分かるように説明してください。

14年ほど生きてきて、ここまで普通という言葉の意味の落差(らくさ)に驚きつつも
これがブルジョワ(富裕層)ってやつかとただただ呼吸を忘れて呆気(あっけ)にとられた。

うちも医者の家庭でそこそこの暮らしはしてきたけど、これを見るとまるでネズミのお家って感じだなぁと
そっと心の中で自虐(じぎゃく)してみる。やばい、変な汗も出てきた。絶対家具には触らないように気をつけなきゃ。

それにしても、雲雀さんってお金持ちなんだろうか?――それともやはりヤのつく職業の関係者?
考えれば考えるほど不安しか出てこない。下手に足を踏み入れたが最後、生きては帰れなさそうな雰囲気だ。

壊(こわ)れたブリキのおもちゃのようにギクシャクした動きで固まっていると
無視するかのように、門の鍵(かぎ)を開けて中に入るように促(うなが)した。

「多分、迷子になるだろうから着いてきて」

「ええっ…でっでも、まだ泊まるなんて一言も……」

「君、野宿(のじゅく)したい?」

「すいません。お邪魔(じゃま)しま〜す」

最後の言葉の凄(すご)みに負けて恐る恐る足を踏み入れる。
ってかさらりと言われたけど迷子になるってどういう意味!?え、まさかそんなでかくて複雑な作りなの?
あらゆる疑問やこれからの生活に不安がわき上がってきたが、雲雀の先導(せんどう)に続いて日本庭園に足を踏み入れると
あらゆる感情が一瞬にして吹き飛んだ。



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彷徨いアリス