目に映る全てが時を止めたように厳(おごそ)かだけど優雅で、植栽(しょくさい)された庭木を揺らす風が
私を吹き抜けて行くことで景観に動きが出て、ようやくこの景色が現実を私と同じように
生きているのだと安心した。そのまま動かなければ絵画のようにも見える美しさだ。

そして、そんな美しい風景の一端(いったん)に私が居るということも、よく考えると少し恥ずかしかった。
制服姿で…せめて美少女ならこの景色に気遅(おく)れしなかったかもと後悔するも
ゆるキャラボディーを見下ろしてため息をつくしかない。後悔先に立たずとはこのことだ。

と同時に、私の視線を追うように庭を見渡す雲雀さんの横顔も凜々(りり)しく
この風景と溶け込んだ姿は、一枚の日本画のように艶やかで息をのんだ。

最初から最後まで圧倒されっぱなしの訪問(ほうもん)だったが、玄関に入ってさらに驚愕(きょうがく)する。

「え、待って…ここ本当に家ですか?――え、私今違う次元に来てたりする?」

久々に感嘆以外の言葉が飛び出したかと思うと、やや突飛(とっぴ)な発言すぎたのか
前にいた雲雀が小さく何を言っているんだという風に笑った。
あ、ありのままを話すと…まるで老舗(しにせ)の旅館のような光景が広がっている。

圧倒的な経済格差と、そもそも家の格式高さというか…とにかく色々な差をさも当たり前のように見せてくる少年に
かなり目眩を覚えた。これは……人が安易に住めそうな家ではないんじゃないだろうか?
というかこの少年もだが、生活感がまるで感じられない。
しかも平然とこんな得体の知れない私を両親不在中にこんな豪勢な自宅に連れ込んでいいのかと
かなりのお坊ちゃんだろう少年の未来に一抹(いちまつ)の不安を覚えた。

長い廊下が眼前に続き、廊下と部屋を区切る障子(しょうじ)は素人が見ても高級そうなのが見て取れる。
さらに壁に所々施(ほどこ)されているのは絶対名のある日本画家が描いたようなものばかりの芸術性の高さ。
同じ次元で生きている人とは思えないなと思いながら、とにかく何も触らないように
少年の後を気後れしつつも続いて、玄関で靴を脱いで靴下のまま進んで行った。



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彷徨いアリス