冷蔵庫を開けると、生活感がなさげな家にしては結構食材も豊富で安心した。
雲雀さんいわくレトルトや惣菜そうざいを買わずに常に有機野菜を使った本格的な料理をするタイプの家庭らしい。
出汁だしからちゃんと取って作ったりときっと手間かけてるんだろうな、と感心しつつも
ちょっぴり庶民しょみん的には意識高すぎて引くような気持ちも半々。
と同時に、うちの親なんか手抜きのオンパレードだと少し気まずくなる。
この家に来てから、彼と一緒にいる時常に感じていた劣等れっとう感を10倍濃くして飲み干すような気分でいっぱいだった。

「ハンバーグってそういう風に作るんだね」

「そうなんですよ〜!!でも男子だと作り方知らない人も多いかな?」
いきなり真横からのぞき込んだ雲雀に安定のビビりを見せつつ
眉を下げて苦笑いで律儀に作り方の工程こうていを解説していく。
最初は、興味深そうに見ていたもののだんだん飽きたのか退屈たいくつそうにしだしてきた。

退屈してたら、休んでてもらって構わないと伝えると彼は一言。
「どうせ僕は料理なんかする気ないから」とだけ呟きつつ、こちらの様子をうかがっていた。

うわぁ〜、世の女性を敵に回しそうな今時珍しい亭主関白ていしゅかんぱくっぽい発言〜。
流石天下の雲雀さんだと心の中でツッコむも、ヘタレすぎてそうですね〜としか言えない私。
誰か勇気とこの家から飛び立てる翼と現金を授けて下さい。

「そういえば、さっきの話に戻るけど……。
どうして辛い時でも笑顔なんだい?マゾなの?」

マゾの部分はちょっと気まずそうにボソッと呟かれたのが
余計にダメージがでかかった。げっと嫌悪感をあらわにしたまま首を振る。

「ええ!?違う違う!!――あー、えっと……笑いません?」



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彷徨いアリス