ついてない1日 01
今日は本当についていない1日だった。まず初めに、携帯の電池が切れたことにより目覚ましのアラームが鳴らなくて寝坊した。慌てて飛び起きて準備し家を出たところで、昨晩の冷え込みにより凍ってしまった水溜りに足を取られすっ転んでしまった。
同じマンションの人の冷たい眼差しを感じながらぶちまけてしまった荷物を慌てて鞄に詰め込み駅まで猛ダッシュ。運良く改札口をスムーズに通り抜けたと思ったらタッチの差で目の前の電車が走り出す始末。呆然としながら次の電車を待つこと10分。満員電車に揺られ、やっとの事で降りる駅に着いたと思ったら何故か目の前に男3人。
きょとんと見上げていると、警察ですと言われてこれまたきょとん。え、なんで?と周りを見渡せばすぐそこのベンチで顔を覆い、さめざめと泣いている女子高生らしき子。私服警官らしい女性が女子高生の背中を擦りながら此方を鋭い眼差しで睨んでいる。
これはまさか…。
「自分が何したか分かってるのかい!?」
鋭い眼差しと共に吐き出された言葉には侮蔑と怒りが含まれていて、僕は肩をビクつかせながらも慌てて言葉を紡ぎ出した。
「なっ何の事ですか!?僕は何もしてませんよ!?」
そう言えば更に目を釣り上げて怒りを露わにする警官達。言い逃れ出来ると思ってるのか、人として恥ずかしく無いのか、とか何とか言われた気がする。が、何より痴漢に間違われたという事に動揺して頭に何にも入って来なかった。そんな僕に警官は追い打ちをかける。
「彼女がいつもこの時間に君にセクハラされていると訴えているんだぞ!?」
「だ、だから僕はいつもは2本前の電車で通勤して…」
「嘘をつくな!」
「ひえええ…」
まるで信じてくれない警官達。僕は半泣きになりながら、僕と誰かを勘違いしてるだろう女子高生に視線を投げかける。
やっぱり全然身に覚えのない女の子だ。いつもの時間帯であれば会うことのなかっただろう。
暫くして少し落ち着きを取り戻したらしい女子高生(僕は息付く間もなく警官に罵られていた)が此方に恐る恐る目を向けて、漸く僕と目が合った。
「…あれ?」
小さく小首を傾げる女子高生。
「え?」
その様子を間近で見た女性警官の顔色がサッと青くなる。そして、それは僕を囲っていた警官も同じだった。
「ま、まさか…」
「ひっく、この人、誰です…?いつもの、人じゃ…無いです、けど…」
その瞬間、空気が凍り付いた。
「本当に申し訳ございませんでした!」
誤解と分かった瞬間にヘコヘコと頭を下げ謙る警察官達。さっきまでの剣幕が嘘のようだ。まさか痴漢の犯人と間違われると思わなかった僕は、心身ともに疲弊しながら警官の謝罪を右から左へ受け流す。
「本当に、本当に申し訳ございません!」
「…いえ、誤解が解けたならそれで良いですから…」
取り敢えず、早く会社にいかなければならないのだ。さっきから震えっぱなしの携帯に冷や汗を垂らしながら早くこの場から立ち去ろうとする。
しかしなかなか帰してくれない警官。延々と謝罪を続けられああだのこうだのと言葉を羅列されたが最早頭の中は会社の事ばかり。決して社畜な訳ではないが、遅刻の理由が痴漢に間違われたなんて言いづらいに決まってる。
ちなみにこの後、会社に折り返し掛けた電話で部長に散々笑われ電話口でいじり倒された。