バケツのきみ 

「行くぞ、樺地」

「ウス」


生徒会室へ向かおうと廊下を歩いてる際、窓の外から声が聞こえた。

興味本位に窓から見下ろしてみると、どうやら男と女が揉めているようだった。


「ったく、学校で痴話喧嘩とは…暇なもんだな。」


構わず行こうとした瞬間、パンッという乾いた音が響いた。

何事かともう一度下を見ると、女が右頬を抑えている。


「あのさぁ…綺麗だけが取り柄の庶民が、調子に乗らないでくれる?」


あいつは確か、3年の…つまりあの女は2年の苗字名前か?

あの2人が付き合っている事は知っていた。
馬鹿みたいに一緒に居るところを食堂や廊下で見せつけられていたもんでね。

まあ、あの様子じゃそれも終いのようだが。


「樺地、水を汲んでこい。」

「…水ですか?」

「そうだ、急げ樺地。」

「ウス」


近くに家庭科室があって良かったぜ。

しかし、あの品の無いぼんぼんがやりそうな事だ。
苗字名前も、いかにも悪い奴に引っかかりそうな感じだしな。

2人を見かけるたびに思ってたんだよ。
苗字名前が、あいつに連れ歩かれる犬にしか見えないと。

…他人のいざこざに首を突っ込むつもりはなかったんだが


「汲んで来ました」

「ああ、ご苦労」


樺地から水の入ったバケツを受け取った俺は、真下の男に向かって、バケツをひっくり返した。


「おっと悪りぃ、下に人が居ると思わなかったぜ」


びしょ濡れになった男を見下ろしてから苗字の方を見ると、彼女までびしょ濡れになっていた。

いけねぇ、俺様としたことが苗字にもぶっかけちまったな。あとで保健室に連れて行くか。

着替えは体操服があるな。
無かった場合は新しい制服を手配させればいい。


男は俺に謝罪をしに来いと叫んだ。

ほう?お望みとあらば、今すぐそっちへ行ってやろうじゃねーの。


「お前は階段から降りてこい。タオルを忘れずにな!」

「……!」


助走をつけ、窓の外へ飛び出した。

ちんたら階段なんか降りてたら、またあの野郎が苗字名前に何するかわかんねぇからな。

2階ぐらいなら余裕だぜ?

…なんなら水はかけずに飛び降りれば良かったな、そうすれば苗字も濡れなかったろうに。


スターン!

地面へ華麗に着地した俺は、くるりと振り返った。


「ほらよ、来てやったぜ?」


ジィィンとくる足の痛みにうっかりフラつきそうになったが、なんとか持ちこたえた。

2階ぐらいの高さなら平気だと思ったが。
なるほど、そこそこ痛いじゃねーの!

バケツのきみ
end.

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わらびもち

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