不幸中の幸いの幸い 

力任せに涙を拭うと、手の甲に黒いマスカラがへばりついてきた。
うっかり盛大に目こすっちゃったよ。今の私の顔はさぞかしひどい事になっているだろう。

化粧のことなどお構いなしに泣き崩れる中、突然、白くてふわふわとしたタオルが私の頭を包み込んだ。


「よく頑張ったな。」


わしゃわしゃっと濡れた頭を拭かれながら、タオル越しに優しい声が聞こえた。

いやいや跡部さんよ。今このタイミングでそんな事言われたら涙止まらなくなるやつ。

好き勝手溢れ出てくる涙を止めようと苦戦していると、急に体が宙に浮いた。
自分の背中と膝の後ろに回された手、目の前にある跡部さんの横顔。

この状況は、いわゆる、お姫様抱っこ


うわああ!?

「うるせぇ、このくらいで騒ぐな。行くぞ樺地。」

「ウス」


このくらいって、確実にひと騒ぎするくらいなのでは!?

慌てふためく私に構わず、跡部さんはスタスタと歩き始めた。
その後ろからは樺地君がついてきている。


「跡部さん!?私歩けますよ!」

「見事なまでに腰を抜かしてたやつが、何言ってやがる。」

「勘違いです!腰なんか抜かしてません、歩けます!だから降ろしてくださ…」

「いいから、ここに居ろ。」


お姫様抱っこの驚きによって止まっていた涙腺が、また緩み出した。

こんな状態でそんな親切にされたら、もう、跡部さんの優しさに甘えるしかなくなる。


「う、うゔ…うぇっ」


保健室に到着するまでの間、涙が止まることはなかった。鼻かみてぇ〜…

不幸中の幸いの幸い 前編 end.


ちょびっと跡部視点→

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わらびもち

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