ラケットパワー!…OFF
しばらく歩いていくと、公園が見えてきた。
「タカさん、公園行きましょ!」
公園を見つけ、嬉しそうに走って行った名前ちゃん。
こういう夕方の公園でのんびり過ごすのもいいなぁ…
ベンチに座っていた名前ちゃんの隣に腰掛けると、入れ替わるように名前ちゃんが立ち上がった。
「お喉乾いた?」
「んっ?うーん…うん、ちょっと乾いてるかな?」
「じゃあ自販機でなんか買ってきまっす!」
「えっ?ちょっ、名前ちゃん!悪いよ!」
「悪くなーい!」
そう叫んで自販機の方へ走って行ってしまった。
名前ちゃんは今みたいなちょっと強引なところがある。そして押しに弱い俺は、ただただ押されるがまま。
だからたまに考える、時には俺も強引になっていいんじゃないかって。
『ジュースくらい俺が奢ってやるよ』とか面と向かって言えれば。
でも名前ちゃんを前にするとどうも口が絡まって…
ため息をつきながら肩を落とすと、ふと、足元に置いていたカバンが目に入った。
「………テニスラケット」
そういえば、ラケットを持った状態で名前ちゃんと話しした事がない。
これは、もしかしたら、ラケットを持った状態なら俺も名前ちゃん相手に強引になれるんじゃないか?
ラケットを持つと、何故だかわからないがとてつもない自信が湧いてくる。根拠の無い自信だ。でも…
「や、やってみるしか」
「タカさん〜!」
カバンに手をかけようとしたら、名前ちゃんがペットボトル片手にこちらへ戻ってきた。
「はいどうぞ、スポドリ!」
「あ、ありがとう…名前ちゃん」
名前ちゃんは俺の隣に座りながら、冷えたペットボトルを手渡してくれた。
ちょっと喉が渇いたって言っただけなのに、わざわざ飲み物を買いに行ってくれる名前ちゃんは、すごく良い子だ。
「いただきます」
キャップを回して、おずおずとペットボトルに口をつけた。
冷たい…乾いてた喉が一気に潤ってく。
ペットボトルの中身が半分くらいになった頃に口を離すと、隣にいた名前ちゃんが俺の顔を覗き込みながら笑った。
「私も飲んでい?」
「えっ?」
気付くと、俺の手にあったペットボトルは名前ちゃんの手の中。
彼女は俺が飲んだ後のペットボトルに口をつけた。
ごく、ごく
すぐ隣で、白く半透明のスポーツドリンクが、名前ちゃんの喉を通っていく音が聞こえる。その音が頭に響く、エコーかかりながら。
名前ちゃんって強引だし、俺が意識してしまうような事を平気でやってのけてしまうし、一体どうなって…
「ぷはー!まずっ!」
「え……なにっ?まずい?」
「はい、私スポドリ系苦手なんですよ!」
名前ちゃんは手の甲で口元を拭いながら、はじけるような笑顔で言った。
よくよく見てみれば、ペットボトルの中身はあんまり減ってない。
「な、なんで苦手なのに飲んだりしたの?」
「えー」
名前ちゃんは俺の手からキャップを取って、ペットボトルのフタを閉めながら笑った。
「間接キスしたかったので」
案の定顔が熱くなってしまった。なんで名前ちゃんってこんなに素直なんだろう。
思えば、名前ちゃんとはまだキスした事なかったっけな…俺も、彼女みたいに素直になれればどんなに
「バーニーング!!」
いつの間にかカバンの中のテニスラケットを取り出していた俺は、公園中に響き渡るくらいの大声で叫んでいた。
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わらびもち